« こんにちわ21世紀 | トップページ | 江古田「お志ど里」 »

2011年1月13日 (木)

ある生き方

喫煙所で申し訳なさ一杯で煙草を吸っていた時、スーツ姿だけれど青年とも中年ともつかない何とも形容し難い感じのする男が私の方にやってきました。
「あの、煙草いっぽんください」と云うので、いっぽんあげると神妙な顔つきでそれを口にくわえて一呼吸おくと両手を太ももにぴったりとそろえ、上半身を45度傾けて「礼」のような姿勢のまま両目を閉じた顔を私の方に向けて来ました。もちろんすぼめた口には煙草をくわえたままで。厳かに待機する姿勢に「どうぞ火をつけてください」という無言のメッセージを感じ取った私はあわてて懐からライターを取り出しました。その「いますぐここでキスして」みたいに目を閉じる男を目の前にして一瞬「いまこの場を静かに立ち去ったらどうなるのか」という気持ちをぐっとこらえたまま、すぼめた口にくわえられた煙草に震える手で火をつけようとしました。が、動揺して手元が狂いなかなか火がつきません。すぐ目の前にすぼめた口に煙草をくわえて目を閉じる男の顔があって荒く鼻呼吸する音が聞こえたとき、こらえきれなくなった私は「たはっ」というトシちゃんみたいな声を出して笑ってしまい、その瞬間ライターに火がつきました。
ありがとうございます、と云って男は私があげた煙草をすごく大事そうにすごく美味そうに吸いました。ほれぼれするくらい美味そうで思わず「その煙草かえせ」と云ってやりたくなるくらいでした。

おわり

|

« こんにちわ21世紀 | トップページ | 江古田「お志ど里」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/149724/50574426

この記事へのトラックバック一覧です: ある生き方:

« こんにちわ21世紀 | トップページ | 江古田「お志ど里」 »