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2009年1月22日 (木)

さよならブルートレイン

Cxxxx


ぴりいっと乾いた汽笛がなって雪を飲み込む闇のなか、寝台列車はゆっくりと動きます。
私は小学1年生。
母は三十路前半でした。

「おい、ビィルもってこい!」もの凄いドラ声にびくっとなって食べていたカレーから顔を上げると、肉体労働者風の男が泥酔しきった巨体を食堂車の小さな椅子からはみ出させていました。テーブルの上にはビール壜が10本ちかく並んでいたように思います。「きこえねのか、ビィルもってこい云ってるきゃ」ウェイトレスのお姉さんたちはビビリまくり。黒メガネの支配人が来て「お客様、もうお酒はおひかえになられた方が…」「うるせなこの野郎!」と押された支配人はガタタっと壁に手をつき盆に載った水コップがチャーンッと音高く割れました。彼のすぐ隣のテーブルで母と私は「ひぃい」となって完全に空気になりきろうと努めました。
「誰かたすけて!!!!」

するとそこへ「やい貴様」と澄んだか細い標準語が飛ぶと、どこから来たのか線の細い、ちょっと不幸そうなトレンチコートの男が巨漢の真向かいの椅子にするっと風のようにすべり込みました。「貴様さっきから見てるとずいぶん酔っぱらってるじゃねえか」「誰だテメェ!」「誰でもないよ、この列車の乗客さ、みんなが迷惑してんだろう。酒も大概にしたらどうだ、え?」「なんだとぉおお!てめえ!」巨漢の顔は爆発せんばかりに紅潮し、二人はテーブルを挟んでにらみ合いました。「ほーら見てみろよ坊やの前で恥ずかしくねぇのか?」とおじさんは私を指差すと巨漢は「坊やがどうしたっ」すると今度は「奥さんも怖がってるじゃねえか」と母を指差し「奥さんがどうしたっ!」の応酬。そこへメガネの支配人が私たちに席を離れて避難するよう誘導しました。激しい応酬のつづく食堂車を出る時、振り返るとあの線の細いおじさんの背中がちらりと見えました。
寝台列車はちょうど秋田と青森の県境あたりで唐突に止まり、水を打ったような静けさが車内に漂いました。雪がしんしんと降り続き、暗闇を寝台ベッドの窓から眺めていると、やがて列車がぐあったんっと動きだし、それと同時に車内アナウンスは無慈悲にこう告げるのでした。
「先ほど食堂車でもめごとを起こされたお二人には降りていただきました」
えーっ、あのおじさんは何にも悪くないのにー!?ぼくたちを助けてくれたのにー!?こんな夜中に駅でもない雪のなか列車から降ろされて、あのおじさん大丈夫なのかな。と、心底車掌に訴えようと思いました。
今でも県境に取り残された二人が雪の降るなか喧嘩をし続けているような気がしてなりません。
あのブルートレインでの出来事から私は学びました「酔っぱらいにヘタに絡むと損をする」と。

終わり

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コメント

次にこの案件

昔、自殺するなら、電車に飛び込むようなことはするなと言われました。
電車を止めると、1秒何百万も取られると聞かされました。

JRで思い出しましたが、昔サイパンに行った時、JR東日本の若い男の子3人(当時のオレと同い年ぐらい)と知り合いました。
その人たちに、JR東に伝わる怪奇話やらをいろいろ聞きました。

その中の一席。
タイトル「鶴巻車掌区の怪」

ちゃーん ちゃーん ちゃーん
ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃちゃーん
ビヨーン ビョーンビョーン ビョーン

オープニング曲で疲れました。

投稿: 名犬ジョリーの端役の少年がジムシーの声で、主役も一緒だから、もろコナンでした。 | 2009年2月 6日 (金) 12時11分

えー生殺しかよ!

ところで深田恭子の「スカポンタン!」はどう発声されるんでしょうかね。気になります。本家の小原節には到底およばないのはわかっているけど。

投稿: 竹の子にかぎって2 | 2009年2月 6日 (金) 19時48分

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