« 全部オーケーなんだぞ | トップページ | 秋の季語、それはジョージ・チャキリス »

2007年9月27日 (木)

老婆から買ったもの

ベージュのコートを着て白髪を束ねた少し身なりのいい老婆。
見ようによっては上京した息子思いの母親のようにも見える老婆。
を、最近勤め先の周辺でよく見かけていました。
ある日、大勢が行き交う雑踏の中から彼女に呼び止められました。
人ごみをかき分けてその視線は強烈なビームを放って明らかに私の方に向けられていて、思わず立ち止まってしまいましたが後悔しても後の祭り。
「あの」
消え入りそうな声で、でも何かが差し迫った声音で眉間に皺を寄せながらこう切り出した時、銀座の騒音がきゅーとレベルダウンして老婆の声がまっすぐこちらに超能力のように響いて身動きができなくなりました。
「お忙しいところ呼び止めてしまい大変申し訳ございません。ただ、ただ、わたくし只今、大変逼迫した状況にありまして何日も食べ物を口にしておりません。1000円ちょっとでよいのです、1000円ちょっとで…よいのです」
ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
老婆のエコーがかかったような丁寧な物言いと鋭い眼光が強烈に光を放って飛び込んできました。
そして彼女のこれまで歩んできた人生、そして頼る人も食べ物も住む場所も失った今現在を投影したかのような荒漠とした土地に嵐がごおおおっと吹き荒れているような、そんな風景を見ました。五感を揺さぶるすさまじいトリップ感、無意識に私は1000円札を老婆に手渡してしまいました。
がっくりと落込んだ…
1000円で買ったのはどんなホラー映画よりも恐ろしい荒野の風景。
そういうことにしておきます。

|

« 全部オーケーなんだぞ | トップページ | 秋の季語、それはジョージ・チャキリス »

コメント

久々のコメントです。
イッキ読みさせていただきます。

まず、この案件についてですが、老婆は「1000円チョット」と言っています。
「チョット」とはトルキスタン地方で「お命ちょうだい」という意味なので、その老婆は「1000円であなたは楽に死ねますよ」という意味だったのかもしれません。

投稿: ニコチンチン | 2007年10月25日 (木) 12時27分

トルキスタンとはまた想定外だったなー。都会は怖いね!

投稿: 竹 | 2007年10月26日 (金) 10時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/149724/16589453

この記事へのトラックバック一覧です: 老婆から買ったもの:

« 全部オーケーなんだぞ | トップページ | 秋の季語、それはジョージ・チャキリス »