« 三井倶楽部のお庭にて | トップページ | 村上春樹チックな昼 »

2005年12月19日 (月)

江戸川乱歩チックな朝

私は生まれてこのかた真の恐怖といふものを味わった事がない。これから諸君にお聞かせするある異様な体験こそがその後の私の人生におひて図り知れない影響を後々まで与へた事をここに記するのである。
それはある晴れた初冬の朝であった。寝床から起きた私の目は何気なくテエブルの隅に置ひてある菓子包に留まったのである。嗚呼、これがその後に起こる忌わしき怪奇の前触れであるとは誰が予測したであらうことか。そして菓子包を開けやうとしてふと見やると果たして賞味の期限が切れていたのであった。懸命なる読者諸君はここで既にお気付きかと思われる。既に私の身におぞましき一大事が迫っている事を。仕方なく思い私は煙草の箱に手を伸ばし中から一本を取り出し火をつけやうとして、ふと思い留まった。煙草を逆にくわへているのである。ここではあへて語らずにおくが、これは後々に起こる一大怪奇現象の伏線をなす事柄故、読者諸君は大いに気に留めておひてもらいたひ。煙草を吸ひ終わると床に落ちている明細書に目がいった。嗚呼、何たる運命のいたづらであらうことか!この時すでに思いかえすもおぞましく身の毛もよだつ怪事変がじりじりとまるで一匹の執念深い蛇のやうににじり寄っていたのを私はまったく気付かずにいたのである。ee004g01

|

« 三井倶楽部のお庭にて | トップページ | 村上春樹チックな昼 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/149724/7699223

この記事へのトラックバック一覧です: 江戸川乱歩チックな朝:

« 三井倶楽部のお庭にて | トップページ | 村上春樹チックな昼 »